前回の記事に引き続き、運営に携わっている吉田幸弘さんの出版塾にて気づいたことを情報共有してまいります。
ビジネス書・実用書の出版を目指している方の「出版企画書」を、少なく見積もっても20本以上100回以上はフィードバックをしてきました。また、わたし自身も出版企画書を今も現在進行形で作っています。
出版社の編集者さんに比べると少ないと思いますが、それでも色々と企画書の傾向が見えてくるようになりました。内容は人によって全く違うのですが、そこに書かれているテキストの端々(言外)から出版に対する心構えが伝わってきてしまうのです。
KEI
出版は成功のための手段ですか?
出版を成功のための手段と考えている人がたくさんいますが、その思いが強すぎる場合は要注意です。
その思いが伝わってくる企画書の特徴は以下のようなものです。
- 本をほとんど読んでいない:
企画書へ形式的に類書が書かれてあるが、理解が浅いため、自分の企画書のテーマとズレていたり、自分と影響力が全く違う超有名著者などの本を選びがちになる。 - 売れている本を調査・研究していない:
書店でよく見かける人気の本や、ビジネス書の最近の傾向などについて、実際に自分が見たり調べた情報を語ることができない。売れる本を作るための仮説を持っていない。 - 本よりも他のコンテンツの話を好む:
例えば、研修・SNS・動画などで提供されているコンテンツの話は詳しいが、本以外の媒体で人気があるコンテンツを本にして売れるかはわからないので、あくまで本で提供されているコンテンツについて話せるほうが好ましい。
ビジネス書の出版は、起業家・経営者としての成功に役立つことは大いにあり得ますが、この仕事は自分一人だけでできるものではなく、編集者さんと一緒に取り組んでいく必要があります。そのため、自分の成功ばかりでなく相手の成功について考えておくことも重要ではないでしょうか。
あなたはどんな人と組みたいですか?
誰かとコラボしてイベントを開催したり、商品やコンテンツをつくろうとなった時、どのような人と組みたいかを考えてみてください。
仮に相手が、自分のメリットばかりを追い求めて、こちらをいいように利用したいという考えが見え隠れしていたらどうでしょう。誰しも、組みたくないと思うのではないでしょうか?。または、こちらもうまく利用できるところは利用して、メリットが無くなってきたら素早くポイ捨てしようと考えるかもしれません。
逆に相手が、あなたのやりたいことが何なのかを真剣に考えて、あなたのこれからの計画や目標の実現のために役立とうとしてくれるならば、あなたもまた相手の役に立つことを考えて、共に成功して喜びを分かち合おうとするはずです。
商業出版の企画提案は、出版社・編集者へのコラボの提案ともいえるものです。著者と編集者が協力して良い商品をつくって市場や読者に良い影響を与えていくために、お互いにできることをしていかなければなりません。
しかしながら、出版を自らの成功の手段とする考えが強すぎる人の本音は、出版業界のことも編集者のこともどうでもいいので実はほとんど興味がありません。自分が成功するために使えそうかどうかくらいにしか考えていないのが、企画書やプレゼンの端々の言外から伝わってきてしまうのです。
相手もあなたが使えそうなのかを見る
自分の成功のために使えそうか?という目で見ると、相手もまた同じように自分のことを見ているかもしれません。編集者から「この著者はどのくらい使えそうか」という風に見られても、お互いさまということになります。
世の中には様々な価値観を持つ人がいるので、著者の中には自分の成功のために、出版社や編集者を使いたいと考える人がいる一方、編集者の中にも自分の仕事を効率よくこなしたり出世や成功のために、著者をうまく使いたいと考える人もきっといるでしょう。
しかし、もし自分の仕事である「出版や本を愛している」編集者だったら、出版や本を自分の成功ためのツールや足台としか見ていない著者に対してどう感じるでしょうか?
きっと本音は少し悲しんでいるのではないでしょうか。自分が愛している仕事を大切に思ってくれている相手と、使い捨ての道具のように思っている人と、どちらと深くかかわって長く仕事をしていきたいと思うでしょうか。
いずれにしても、それぞれの価値観に合った人と仕事ができるのが良いと思います。編集者をツールと思っている著者と、著者をツールと思っている編集者は相性ピッタリと言えるかもしれません。
出版企画書を見るとバレます
ビジネス書の出版が、本業の飛躍のきっかけになることも期待したいところではありますが、自分の成功ばかりを追い求めるのではなく、まずはこれから組む相手(編集者)を喜ばせることを考えてみると、企画書やプレゼンの端々から伝わってくる心構えにも変化があるはずです。
自分の企画書しか見ていない人にはわかりませんが、色々な人が作る企画書に目を通してプレゼンを聞いていると、編集者のことを考えているのか、または自分のことしか考えていないのか、その心構えがわかってしまいます。特に編集者には絶対バレていると思います。でも、バレていたとしても、使える著者であれば出版を実現することは十分可能なので「それでよし」と考える人も多いのかもしれません。
編集者が仕事でかかえている課題や、これからやっていきたいことを知ることは、実際に編集者とつながりがないと難しい面がありますが、ネット上にも様々な情報がありますので、調べてみると良いでしょう。大切なのは、興味を持って知ろうとすることです。
次回予告:出版企画でプロダクトアウトはNG
今回は、出版企画書をつくるうえでの心構えについてお伝えしてきましたが、次回はさらに具体的で実践的な情報を書く予定です。
マーケットインとプロダクトアウトという言葉を聞いたことがありますか?
マーケティング用語を勉強された方は、よくご存知だと思います。出版企画を作っていくうえでも役に立つ考え方ですので、次回の記事ではこれについて深掘りして紹介していきます。
KEI